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オバマ氏の勝利とフランスのマイノリティ

 オバマ氏のアメリカ大統領選挙での勝利は、近年続いている戦争と格差拡大傾向に対する国民の不安の表れというほかに、言うまでもなく初のアフリカ系アメリカ人(といっても彼はハーフだそうですが)大統領の誕生という意義を持っています。この点は、日本でも当然言及はされていると思いますが、おそらく、この点を日本にひきつけて考える向きは少ないだろうと思います。
 日本にも歴史的にハンディキャップを負ってきた人種的・社会的マイノリティ集団が相当数存在することを考えれば、この点を日本の問題として考えてみることも無駄ではないと思いますが、それはともかく、移民大国フランスにおいては、オバマ氏当選のこの点での影響はより直接的であり、多くの人に強い感銘を与えたようで、報道でもこの点が大きく取り上げられました。
 人種問題がなお深刻だとは言え、政治の世界にもそれなりにアフリカ系の人々が進出しているアメリカとは異なり、フランスでは本土選出の下院議員の中で黒人は1名(パリ20区(移民の多い区)選出)、移民出身の上院議員は五指に足りない程度と、黒人ないし移民系(黒人のほかはマグレブ系が多い)の人々の政界進出はかなり遅れている印象を受けます。それでも、サルコジ大統領就任後、政府に3名の移民系(しかも女性)の大臣が任命されています。本ブログでも紹介したラシダ・ダチ司法大臣、ファデラ・アマラ都市政策担当閣外大臣はマグレブ系、そして、セネガル生まれの黒人で、弱冠30歳にして抜擢されたラマ・ヤド人権問題担当閣外大臣です。
 フランスでは、1848年にアメリカのような大きな苦痛を経ることなく奴隷制を廃止した後、共和主義という基本原理の下、アメリカ、特に南部にあったような法的・制度的な人種差別は存在していなかったものの、もちろん、このことは社会的な差別がなかったことを意味するわけではありません。そこで、アメリカでのアファーマティブ・アクションに相当する積極的差別(discrimination positive)と総称される措置の導入が一部で主張されましたが、共和主義原理との抵触を理由に抵抗も強く、正面からの導入は困難なようです。共和主義原理と言えば、そもそも、フランスでは人種ないし民族別の統計を作成すること自体がこの原理に反すると考えられていることは以前紹介しました(http://sog.blog.so-net.ne.jp/2007-11-17)。したがって、アメリカでは普通に見られる「白人の人口比率は60年の88.6%から66%になった」とか「2047年にはマイノリティーが総人口の半数を超える見通し」(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20081105-OYT1T00572.htm)といった言説がフランスでは事実上難しいわけです。
 さて、こうした状況の中、オバマ大統領の誕生は、フランスの移民・黒人に大きな感銘を与えたようです。11月7日付ル・モンド紙は、彼らの声を紹介しているので、ここでもいくつか紹介してみたいと思います。
 家族がカリブ海はアンティル諸島出身という27歳の女性法律家マイアさんは、開票状況をテレビで見ながら、同時にオバマ大統領就任式見物のためにワシントン行きの航空券を予約したと言います。オバマ氏勝利に驚くと同時に幸せで誇りに思うと言う彼女にとって、この勝利は自分のものでもあります。翌朝のメトロ車内では、黒人の乗客同士、ウインクをしたり、笑みを交わしたりと言う光景が見られたそうです。しかし、同じシナリオがフランスでもありうるかというと、マイアさんは否定的で、国政経験が2年しかない若い候補者が現れるなんて、「システム」が許さないと言います。
 マイアさんの父親で、パリ第6大学教授のジェラール氏は、個人的には差別を感じたことはないが、ドアは容易には開かないと常に感じてきたといいます。しかし、今回の選挙は強力なシンボルで、いまやすべてが可能である!と興奮気味です。
 カメルーン出身で戦略的交渉の学位をもつカトリーヌさんも、この問題でフランスは遅れており、2倍の努力が必要だとしながらも、これからはテレビをつければ、スポーツ選手や歌手以外にも黒人の姿が見られることになり、白人の視線も変わるのではないかと言います。彼女はこの3年間求職中だったそうですが、これまでは(もちろん、差別を恐れて)履歴書に写真を貼らないで来たが、これからは貼ろうと思う、今では混血(métis)であることを誇りに思うとやはり興奮気味のようです。
 他方、それほど楽観的でない意見もあります。セネガル人とマルティニック人の血を引くIT技術者のトマさんは、アメリカの経験は歴史の違うフランスには移植できないと言います。フランスで有色人種が大統領になる日は遠いと思うとし、最後に皮肉っぽく、「政治分野では、重職についた最後の黒人は、(アメリカで公民権運動が盛り上がる中、キング牧師が暗殺された)1968年に上院議長になったガストン・モネルヴィル(Gaston Monnerville, 1897-1991)なんです」と付け加えたということです。
 

 

 


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コメント 1

挺

I think The victory of Obama lies not on his skin colour,but his age!
McCain is too old,looking boring and not hopfull for future.
by (2008-11-13 23:07) 

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