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日本のワインのフランス進出

先日、こちらのテレビ(フランス2)で、日本のワインをフランスに輸出するという話が紹介されていました。毎週放送されているEnvoyé spécialという1時間半ほどの報道番組で、毎回3つほどのルポルタージュが放送されます。日本で言うとTBSの「報道特集」に少し近いかもしれません。ワイン法の第一人者である明治学院大の蛯原先生からのご教示で見た12月18日放送回では、掘り出し物のワインを求めて世界を飛び回り、フランスに輸入する活動をしている方に密着するというルポルタージュがありました。例によってネットでも見ることができます。
  http://envoye-special.france2.fr/index-fr.php?page=reportage&id_rubrique=701
 実際は、主として(時間的には3分の2ほど)最後のロシア皇帝ニコライ2世(1868-1918。有名な大津事件(1891年)の被害者でもあります)によって設立されたというウクライナはマサンドラ地方のカーヴの紹介が中心ではありました。確かに、こちらの方は年代もののヴィンテージワインがずらりと並んだカーヴがあり、インパクトは強いです。インポーターの方でもパリの3つ星クラスのレストランに売り込むつもりのようです。
 日本の方は、まずは東京のデパ地下で日本のワイン事情を視察。確かにボルドーやらブルゴーニュと並んで、日本のワインも置いているようです。ということで、詳しい話を聞くため、おなじみ田崎真也氏の許へ。そこで田崎氏がそこそこ流暢なフランス語で勧めたのが、日本のスパークリングワインですが、フランス人の方は高級シャンパーニュと区別がつかないと驚きの様子。それほどのものなら一度飲んでみたいと思ったのですが、蛯原先生によれば7,000円ほどだそうで、それならもう少しでドンペリやらポメリー・ルイーズが買える値段で、おいそれとは行きませんね。田崎氏によれば、この10年の日本のワインの質の向上は目覚ましいとのこと。
 フランス人一行は、その後東京を離れ、山梨に向かいます。最初に訪れたぶどう畑は、食用のぶどうと同様、棚を作って頭上につるを這わせる方式で、フランス人は驚き、これはワインに向かないのではないかなどと言っていました。気を取り直して、富士の裾野を訪ねると、フランスでよく見るような背丈の低いぶどうの木が連なる広々とした畑が広がっています。インタビューに答えたのはアメリカ人のシンガー氏で、それによれば、世界中で日本料理の人気が上昇し(パリでもかなりの人気のようです)、それにあわせて日本のワインの需要も拡大するだろうということです。日本料理が人気だといっても、和食にワインが合うかどうかは別問題のような気もしますが、それはともかく、現在の日本法では、国産ぶどうが5%含まれていれば、残りが輸入ぶどうで醸造したワインでも国産ワインを名乗ることができるのだそうですが、それではEU等の国際基準には全く適合しないことになります。とはいえ、国内ぶどう農家の高齢化は深刻で、原料確保は大変なのだそうです。そんな中、シンガー氏は、国際基準に合わせた国産ワインを造り、海外進出を図ろうということのようです。
 蛯原先生によれば、この甲州ワインはすでに英国には輸出されているようで、日本でも2,100円ほどだそうです(http://www.koshu.org/index.html)。これくらいなら試してみることもできそうですね。フランスでは09年初めに味わえるそうです。
 国産ワインについては、下記ブログもご覧下さい(ここしばらくはフランスワインの話題が多いですが)。
  http://d.hatena.ne.jp/herault/

 

 


憲法改正は不要だそうです―ヴェイユ委員会報告書

 08年12月17日、憲法前文の改正の要否について諮問されていた有識者委員会(委員長シモーヌ・ヴェイユ氏)が、当初今夏とされていた期限から大幅に遅れて報告書を提出しました。諮問されていたのは、私生活保護に対する権利、人間の尊厳に対する権利といった新しい権利や、「積極的差別」の原理を憲法前文に規定すべきかどうかといった点ですが、今回とりわけ注目されたのは、最後の「積極的差別」の原理です。
 もともと、フランスでは共和主義的な市民平等原則の下、移民やその子孫に対する差別が深刻化し、2006年には大都市郊外で大規模な暴動に至ったのも記憶に新しいところです。そこで、不利な立場におかれている人々の集団を人種・民族的な基準で選び出し、特別な措置を行うという「積極的差別」(アメリカで言うアファーマティヴ・アクション)の導入が議論になってきたところです。しかし、現行憲法上このような措置は不可能であるとされています。こうした憲法の立場は、論者の多くも積極的に支持しており、共和国の普遍性に対してはなお根強い支持があるような印象を受けます。
 サルコジ大統領は、従前よりこの積極的差別措置の導入を主張しており、冒頭のような諮問に至ったわけです。しかし、提出された報告書は、積極的差別の対象となる集団の十分な定義は不可能であるし、また、積極的差別政策には弊害もあるとして、この原則の憲法への明文化に消極的です。アメリカや南アフリカ、インドのような積極的差別を実施している国においては、かつて法律上人種差別が行われていた歴史を有しており、それを是正するためにこうした政策が採られているのであるが、フランスはこうした国々とは異なるのであって、これまでの方向性を発展させていくべきであると報告書は述べています。なお、冒頭に挙げたような新しい権利に関しても、すでに人権条約や法律に規定があり、憲法に規定する必要性が乏しいとしてやはり消極的です。
01_12[1].jpg 大統領は、オバマ氏のアメリカ大統領当選にも触発されて、改めて積極的差別に関して前進を図ろうとしているようですが、今回の報告書を受けて、正面から積極差別を導入することは断念し、従来から行われてきた施策を充実するという方向に進まざるを得ないようです。報告書の提出を受けた日の午後、大統領はもっとも権威の高いグランド・ゼコールの1つであるエコール・ポリテクニークで演説し、困難な地域在住(人種・民族ではなく住所を基準としている点に要注目)の学生向けに公務員試験準備クラスの設置、2010年度に高校の特別進学クラスの定員の30%(06年で22%)を奨学生に割り当てること、匿名履歴書(移民系の氏名を持つ応募者を書類選考段階で排除することを防ぐため近年採用が推奨されている)を大企業100社において実験的に採用すること、政界における多様性促進を評価する委員会の創設、テレビ番組における多様性を促進することなどの目標を設定しました(演説のビデオはこちら↓)。
http://www.elysee.fr/webtv/index.php?intHomeMinisterId=0&intChannelId=3&intVideoId=868
 なお、匿名履歴書については、ある市民団体が2004年に行った興味ぶかい調査が紹介されています。同じ内容の履歴書を企業に送って反応を見たところ、フランス風の氏名を持つパリ在住の白人男性の場合、75の企業から面接通知が届いたのに対し、同様の男性が郊外の問題を抱えた地域在住の場合には45、モロッコ風の名前の人の場合には14だったというものです。
 また、近く予定されている内閣改造において、機会の平等を担当する政務次官ポストを創設し、有名な反人種主義市民団体SOSラシスムの元会長で、野党・社会党の全国評議会構成員のブチ(Malek Boutih)が就任する可能性があると報道されていますが、本人は否定しています。


ナンテール

 最近は大学ネタばかりで恐縮ですが、秋から始まった今学期は、週に1回、パリ郊外ナンテール(Nanterre)にあるパリ第10大学(パリ大学ナンテール校などとも言われるようです)に通っています。郊外といっても、電車(RERのA線)で凱旋門真下の駅(シャルル・ドゴール・エトワル駅)から3つ目で、自宅からドア・トゥ・ドアで30分ほどですので、時間的には市内中心部にあるパリ第2大学に行くのと変わりません。最寄り駅の目の前にあるのも便利です(駅名自体が、ナンテール・大学前(Nanterre Université))。

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 市内にある大学は、例えばパリ第2大学は法学・政治学など、ソルボンヌ大学とよばれる第4大学は人文科学といった具合に、単科大学とまでは行かないものの、学問分野別に編成されているのですが、パリ第10大学など郊外にある大学は、総合大学に近い組織になっています。また、市内の大学は、施設が市内各所の建物に分散しているのですが、ナンテールでは緑溢れるキャンパスが広がっており、日本の大学に近い感じです(日本では緑溢れていないところも多いですが)。

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(正面奥の建物は図書館。左手の青い建物は体育館(多分))

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(法学部の建物)

 パリ第10大学は、全体として左派の傾向があるとされており、1968年の5月革命の発端となった事件が生じたことでも知られています。法学系でも、新しいアプローチに積極的な研究者が多いようで、伝統と格式を重んじる第2大学とは対照をなしているようです。公法学でも国際的に著名な教授がおり、日本から留学・在外研究される方も比較的多いように思います。
 今回聴講しているのは、基本権の一般理論に関する修士課程のセミナーです。たまたま担当教授と面識を得たので、その個人的関係で聴講させていただいています。内容は人権の基礎理論に関する主要文献を読んでいくというもので、ロック、ベンタム辺りから始まり、最近のものではドゥオーキン辺りまでについて、著作の抜粋を読んでいくというものです。面白いのは、これらの日本でも著名な論者に加え、イタリアやスペイン語圏(スペイン・南米)の議論にもウェイトをおいている点です。
 また、昨年聴講していた第2大学の授業と違って、学生の報告も重視されているようです。担当になった論者の主張をまとめて20-30分で報告するのですが、自分なりに整理して、かなりしっかりとした内容であるように思われます。約20名の出席者の少なくとも2,3割が留学生(アクセントからして英語圏からとスペイン語圏からのようです)ですが、彼(女)たちも積極的に参加しています。
 皆さん大変真剣な様子なのですが、先日、講義中に雪が降り始めた(今年は昨年と打って変わって寒い日が続いています)際、南米からの留学生と思しき女子学生が、珍しくて感激したのか、机に背を向けて食い入るように窓の外を見入っていました。こちらでは何事もストレートです。

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(隣接するデファンス地区の夜景が見える)


博士への道

 先日、憲法専攻の友人の博士論文(thèse)の口頭試問(soutenance)があったので、傍聴に行ってきました。フランスの博士論文口頭試問は一般公開されるのですが、夏のバカンス前に提出した博士論文の口頭試問がこの時期に集中するようで、大学の掲示板には口頭試問開催の告知がたくさん掲示されています。日本の法学系大学院で博士論文を書くのは研究者志望の方にほとんど限られると思いますが、フランスではそのようなことはないようで、実際、パリ第2大学(主として法学系の大学で、総合大学ではありません)だけでも1500名の博士課程登録者がいるということです。
 法学の博士論文口頭試問の様子については、明治学院大学の蛯原先生がモンプリエ大学での様子を紹介されています(http://www.meijigakuin.ac.jp/~cls/joho/hon/no40.htm)が、今回傍聴したのはパリ第2大学の口頭試問の様子です。
 モンプリエでは家族や友人の出席が多いとのことですが、パリでも同様で、20名ほどの傍聴者が来場していました。後で話をしたところでは、家族はもちろん、友人の中にも法律とは無関係の方がおられたようで、何時間もよくわからない話を聞くのは大変でしょうと聞いたところ、まあそうだけど分かるところもあるから、とやさしい返事でした。ほかに、掲示で見て来られているらしい方もわずかながらおられました。
 いかにもフランスらしく、予定時間から30分以上遅れて、指導教授のほか、いずれも憲法学における学内外の著名教授3名の審査員が登場しました。審査員の先生方はいずれも教授の正装たるガウン姿でしたが、蛯原先生のときとは異なり、会場の教室が殺風景な通常の教室でしたので、かなり浮いて見えます。論文のテーマの関係で、イタリアの(多分)著名な憲法教授が招かれており、この先生が審査委員長を努められます。
 モンプリエの場合と同様、まず、受審者が15分ほど論文の趣旨や問題意識を述べます。原稿はあるようですが、フランス人がしばしばそうであるように、棒読みではなく堂々とよどみなく話ができるところには感心させられます。その後、審査員の教授が一人一人、20分くらいずつコメント及び質問を行い、受審者が回答していくという順序で審査は進んでいきます。コメントは、大体賛辞から始まり、内容に対するコメントに負けず劣らず、形式(構成等)に対する言及が多いのがフランス的です。
 今回は全体的に大変なごやかなムードであったのですが、後で聞くと、これは論文自体の評価が高かったからのようで、傍聴者で数年前に同じく口頭試問を受けた方の場合は、もっと厳しい雰囲気だったとのことです。余談ながら、偶然にも、この方はこの時ちょうど読もうと思っていた博士論文の著者で、その論文の電子版を頂いた上、今は今年の憲法改正で大きな影響を受けるといわれているオンブズマン(メディアトゥール)に勤務されているということで、色々ご教示を受け、大変有益でした。
 さて、コメント・質問と回答が一通り終わると、傍聴者は退出を命じられ、廊下で評議の結果を待ちます。5分ほどで再び呼び込まれ、結果が告知されます。評価はA,B,Cのような単純なものではなく、蛯原先生が紹介されているように、《 mention honorable 》、《 mention très honorable 》、《 mention très honorable avec les félicitations du jury 》(後のものほど評価が高い)というような形で告知されます。ただ、やはり後で聞いたところでは、この3段階だけではなく、もう少し細分化されるようです。今回の評価は、最上級ではなかったもののそれに近い高評価で、嬉しい結果でした。
 その後、近所のホテルのパーティスペースで祝賀会が開かれたのですが、このような場合、周りがこうした場をセッティングするのだと思いますが、フランスだと本人(および家族)がこのようなものを準備するのだそうで、面白いですね。審査員の先生方も顔を出され、話が弾んでいました。

(後日補足(08年12月20日)
 成績評価ですが、リール第2大学(法学部)のサイトに説明がありました。
http://edoctorale74.univ-lille2.fr/index.php?id=686&L=0
 それによれば、審査員は審査の結果、上記のような三段階で評価を行うわけですが、同時に次の三つの点にも判断を行うものとされています。
 ・ 当該論文は紙媒体又はオンラインで複製してもよいか?
 ・ 当該論文は手を加えず複製してもよいか、または、審査員のコメントを考慮するのを待つべきか?
 ・ 当該論文は博士論文賞への応募が許されるか?
 最後の点について補足ですが、フランスでは様々な公私の団体が各団体の活動に関する博士論文に対する賞を設けており、その出版を助成しています。憲法分野では、少し見ただけでも、例えば上院が二院制、地方自治体又は政治・議会活動に関する賞を設けているほか、憲法院も博士論文賞を設けていますが、様々な機関が学部生・大学院生の研修生を受け入れていることと並び、これはすばらしいことだと思います。


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